[ライブ]いつか虹になる日のために:「Star*Trine」リリースイベントとこれからのアイドルコネクトへ寄せて

7月だった。アイドルコネクトの新譜とリリースイベントの開催が発表された。

 嬉しさよりもああ、ついに来たか。という気持ちの方が強かった。半分死の宣告を受けた気分だった。
 あのアプリの終了から1年近くが経った。当時は長続きはしなさそうだけれど1年、いやせめて半年は続くだろうと思っていた。甘かった。奇跡の3ヶ月半終了。空前絶後の3ヶ月半終了。疾風怒濤の3ヶ月半終了。アイコネがこの世界に残した最も大きな教訓はソシャゲは3ヶ月半でも終わりうると知らしめたことだろう。 

 まだ未発表曲が残っていたのはわかっていた。それだけにこのリリースは残りの弾が尽きることを示していた(後でわかったがおそらくまだ曲はある)。細々と続けてくれていたストリエでのシナリオ連載もほとんど終了に近い告知がされた。
 終わりだ、いよいよ。いや、もうとっくに終わってたか、残り火が消えるだけだな。商売にならないものにここまで手を尽くしてくれたのにどうして文句など言えようか。自分でもアプリが続いていた頃と同じだけの情熱を保つのは難しくなっていた。プレイリストに入りっぱなしになっていた楽曲を聴き、声優さんや他のコンテンツからの繋がりで思い出すことが多くなっていた。

 新曲の名前はStar*Trine。
 アイドルコネクト25番目の曲にして初めての全体曲。アプリのスタート画面でみんな耳にしていたのに、ずっと埋蔵されていた曲。ここに来てスタートライン。こんなんばっかりだよ、アイコネは。そう思った。

---

 最低限の事柄だけ書いておいた方がいいのかもしれない。2016年8月にスタートして同年11月に一瞬で終わったアイドルコネクトというソシャゲがあった。終わり。

 どうしてこんなことになったのかまったくわからない。

 客観的にはアイマスの何十番何百番煎じの泡沫コンテンツにしか見えなかっただろう(そう見られるほどの知名度すらなかっただろという気もする)。
 実際この文章を書きながら改めて確認したが、どう見ても零細会社が作った三流のソシャゲだった。私は配信初日スタート組だけど(古参アピ)第一印象は「思ったよりちゃんとしてない」だった。普通に考えればインストールして5分で「あっ、はい」でタスクキルされて容量足りなくなった時にアンインストールされるやつだ。だから実際終わったわけなんだけど。

 しかし数ある泡沫にしても何かが違った。シナリオや楽曲、何より9人のアイドルからは抑えきれない個性を示す輝きがあった。

 キャラソン寄りなのに不思議に普遍性を感じさせる歌詞と、普通のアニソンとは少しずつ違う質感の音色を持つ楽曲。
 それぞれ個性の強い作風を持つ2人のラノベ作家を起用したシリアス・コメディどちらも白眉のシナリオ―今振り返ってもテキスト周りに関してはアイコネは他と一線を画していた。

 そして垢抜けたキャラデザからは想像もできないほど個性強すぎなメインキャラクター9人。
 みんな大好きだった。本当に大好きだった。この手の作品で全員好きになるなんてそうそうないのに、アイコネは本当に全員好きになった。アイコネに惚れ込んだプレーヤーはみんなそうだったと思う。
 キャスティングも名の知れた実力派とほぼ無名だけど確かな力量のある新人を織り交ぜ、キャラクターのイメージを大事にしているのが見て取れた。みんな演技も歌も上手く、声優の売り出しありきの匂いは一切しなかった。

 競合コンテンツと比べても地味だったかもしれない。尖ったキャラデザや曲調を持つナナシスやエビストに比べてひと目でわかるような個性はなかった。でも唯一無二だった。あの9人は他の何とも交換不可能だった。

 幸か不幸か、2016年の二次元アイドルコンテンツとソーシャルゲームという、現代日本が生み出した妙な世界はこんなドのつくマイナーソシャゲに入れ込んでしまう人間が相当数いるほどに成熟していた。そしてその輝きの光源があまりにも短い時間で砕かれた時、呪いのような何かが発生していた。大仰すぎるかもしれないけれどこういう言い方しかできない。生き物も同然となった現代のコンテンツはこういうことが起こるのを身をもって体験した気分だった。
 いま考えても終了が決まってからの雰囲気は異様だったと思う。燃え尽きる寸前の星がいっそう輝くみたいに密度の高い時間だった。冷静に考えると終了キャンペーンで毎日10連分の石配っててプレイが快適になっただけな気もするけどそれはおいといて。

 いずれにせよアイコネは終わった。私たちの世界のアイコネは3ヶ月半で終わったアイコネである。手元には徐々に薄れていく記憶と24曲の楽曲が残された。

---

 当選通知が来た。嬉しい反面、気持ちを作るのがあまりにも難しかった。どうしても葬式にはしたくなかった。誰がどう見てもここで終わるだろうが、自分の中では通過点ということにしたかった。回顧する対象にはしたくなかった。

 新曲Star*Trineはほとんど弔鐘だった。何度聴いても頭に入らなかった。本が読めない時の目が文字の上を上滑りする状態みたいだった。

 唯一まともに反応できたのは新譜に収録されていたドラマパートだった。一聴してすぐにあ、空子だ、と思った。疎遠になっていた友人に再会したみたいだった。歌声はずっと聴いていたし、イラストとストーリーもたまに供給されていたが、たしかに普通の話し声を聞く機会は極端に減っていた。声の力というのはすごい。つくづく声優さんはすごい。
 空子に会えるんだ、それだけでいいじゃないか、そう考えることにした。気付けば青春ハイタッチを聴き続けていた。

---

 9月17日がやってくる。羽田は台風だった。声優ライブに遠征するたびに台風や大雪が直撃している気がする。秋葉原でフォロワーと合流する。

 19時半頃に会場に入った。前後左右共にちょうど真ん中くらいの席か。Star*Trineのインスト版がずっとループしていた。雰囲気は異様だった。そりゃそうだ。どんな気分で待っていろというのか。
 ステージ後ろの壁には見慣れた9人のコンセプトアートが大きく引き伸ばされて掲げられていた。所在なかったのでみんなの顔を見ていた。ひかり、かえちゃん、留奈。千乃、空子、唯。やっちゃん、ミユ、つかさ。みんなかわいいな、うむ、引き伸ばしにも耐えるかわいさだ、もっと一緒にいたかったな、とかそんなことを考えた。精神状態が限界になっている人間は大真面目にこういうことを考え始める。

 20時。ライブ中の諸注意のアナウンスが読み上げられ、会場でずっとループしていたStar*Trineのインストが終わる。照明が消され、舞台が暗転する。暗転したまま誰かが袖から出てくる、1人だ。森さんかな。そのままイントロが流れ始めた。意外な曲だった。

 『空になるよ、このハピネス。』
 Flower Tuneと並ぶ、アイドルコネクトの始まりの曲。

 虚を突かれた。曲自体もそうだし、最初に歌われる曲としてもあまり予想していなかった。
 森千早都さんが歌い始める。振り付けを交えながら。踊っている。明らかに一朝一夕では身につけられないだろう本格的な振り付けで。あの空子の声で。感情を込めた表情で。髪型も空子に合わせてくれている。そもそも暗転からそのまま曲入りって本格的なライブの演出じゃないか。

 意識が切り替わった。ああ、おい、嘘だろ。

 これはただのミニライブなんかじゃない。役者にキャラクターが乗り移る、正真正銘の二次元アイドルのライブだ。今目の前で始まったのはアイドルコネクトの初めてのライブなんだ。代用品なんかじゃない、ずっと夢見ていた、本当に待ち望んでいた、アイコネのライブだ。

 ライブ前はひたすら期待しすぎないように自分に言い聞かせてきた。みんな忙しいんだ、こんな終わったコンテンツにいつまでも構っている暇なんてあるわけがない。今日時間を割いて来てくれただけで嬉しいに決まっている。ソロ曲なんて万に一つだ。

 そのはずだったのに。

 会場が熱を帯び始めたのを感じる。声が上がり始める。ペンライトを掲げる手が高くなっていく。間奏に入り森さんが狭いステージをいっぱいに使う。森千早都さんについては少しだけ知識があった。今まで人前で歌うことはそんなになかったと思うけれど、ましてや役柄のままステージで歌うなんてもっとなかったと思うけれど、アイドルだった。

 メモリアの、アイドルコネクトのセンターを務める、春宮空子だった。

 歌も音源とほとんど遜色なかったし、振り付けも最後までしっかりついていた。贔屓目抜きにしても文句なしのステージだった。何より笑顔だった。

 2曲目、spica heart。芝崎典子さん。さっきからの流れを考えれば順当だ。でもほんの10分前までこの景色を予見できていたのは何人いただろう。昨日までのアイコネはライブ映えする曲がライブで聴けるのが当たり前の作品なんかじゃなかったはずなのに。
 芝崎さんも髪型を合わせてくれていた。ひかりの特徴的な大きなポニーテール。
 そしてかわいい。あ、この人かわいいなと思ってしまった時にはもう何もかも駄目だった。御託を並べられる隙はなくなった。元気印のひかりのふさわしい、腕を振り上げて跳ねて歌うのがほんとかわいい。そして笑顔だった。笑っていたのが本当に嬉しかった。

 3曲目、もう決まっている。唯、この時をずっと夢見てた。
 相坂優歌さんは圧巻だった。歌も振りも正直レベルが違った。歌が上手いのはわかっていたつもりだったが本当に上手かった。そして立ち振舞いからして雰囲気を変える人だった。
唯は事務所の中でも一番の本格派だった。メモリアのストーリーだったと思うが、留奈が唯のステージを見惚れるシーンがあったのを思い出した。最もフィクションに接近するのが難しいはずなのに、それを再現し、更新してしまうような風格があった。唯が受肉していた。

 拍手が起こり、声が上がり、MCへ。ただのライブだ。もうどこにも憂いなんかなかった。

 葬儀でもなんでもなかった。ただアイドルコネクトのライブだった。

 3人が空子と唯とひかりのキャラで挨拶をしてくれる。アイコネでこんな瞬間が見られるなんて想像もできなかった。こればっかりだけど本当にこればっかりだったんだ、これが。
この辺から記憶が怪しい。もう全力で楽しもうと決めた。森さんが空子への思いを語ってくれたこと、芝崎さんがこれが初めてのライブなのを話して大盛り上がりだったこと。推せるわ、そりゃ。相坂さんがずっとアイドルの役をやりたくたかったけどこんなことになってしまって(大意)と言っていたこと。相坂くんはどこまでもブルージーな人だった。
 声優さんの内面はあんまり気にしないようにしている。みんなそれぞれに生き方があるし生活がある。でも今日だけは越権を許してほしい。あの3人にとってもアイコネが特別な、思い入れの深い存在だと信じさせてほしい。
 記憶が正しければこのMCのどこかで森さんが前半が終わりました、と言っていた。予感できた。あの3曲が聴ける。

 相坂さんと芝崎さんがはける。森さんが言う。

 「一緒にハイタッチしましょう!」
 ああ、ありがとう森さん、本当にありがとう。それしか言えない。
 ここからはアプリに実装されなかった曲だ。空子やひかりはステージで歌うことが叶わなかった曲だ。それを、それを。
 青春ハイタッチも難しい曲だと思う。しかし完璧だった。振り付けを交えながら歌はなんら問題なかった。

 あなたらしく私らしく。
 CDですらこんなの商品にして大丈夫かよ、ってほど苦しそうな歌い方だった曲。
 それを芝崎さんが歌う。やっぱり苦しそうだった。CDまんまだった。
 ただそこに意味はあった。これを歌うのはひかりだった。事務所で一番の元気印で繊細な子。その子が歌う曲がこんなニュアンスを帯びている。それで十分だった。
 芝崎さんも初めてのライブなのにしっかりした立ち振舞いだった。何よりひかりに真剣に向き合ってくれているのが伝わってきた。

 WHITE PAGE。
 唯一アプリに実装された唯の2つ目のソロ曲。
 シンクロ性、という意味ではこの日1番だったと思う。アイコネで最も特徴的だっただろうサビの振り付け。それが目の前で、あの声を、あの歌を歌ったその人によって。
 相坂くんは歌も振り付けも本当に完璧なだった。この人がこんな場末のコンテンツのためにここまでのレベルで仕上げてきてくれたのは、どんなに言葉を尽くすより訴えかけてくるものが大きかった。
 WHITE PAGEもそのニュアンスを変えていた。アプリ終了後のCDがリリースされた時の、寂しさも物哀しさもなかった。未来への歌だった。

 再びMC。
 正直言ってノベルアプリの発表すら二の次だった。後出しにも程があるって言われそうだけれど、こんなに生命力に溢れたコンテンツがここで終わるはずがないんだ。芝崎さんは泣いていた、森さんも貰い泣きしそうになっていた、相坂くんはブルージーだった。かっこいい。

 最後の曲が始まる。

 Star*Trine。

 ただ1つ覚えている。間奏で森さんが――空子が言った。

 「これからもアイドルコネクトをよろしくお願いします!」

---

 ライブが終わり、相坂くんが袖にはける時、「またね」と言ってくれた。
 そうだ、ここは絶対に終わりの場所なんかじゃない。

 余韻はまだ消えていない。あんなに小さな会場で7曲が歌われたささやかなライブだったはずなのに。

 残された楽曲はすべて色合いを変えた。みんな新しい息吹を吹き込まれた。特にほとんどが実装されずに終わった、未来からの化石のようだった2曲目のソロ曲が信じられないほど違う。
 青春ハイタッチはもう空子の笑顔しか見えない。WHITE PAGEは再び唯の語られざる物語を待つ光を帯び始めた。千乃の未完成のスケッチだったColorful Giftも色付き始めている。神様お願い♪もなんか留奈に80年代アイドル風の曲を歌う必然性が待ち構えているんだろう。たぶん。誰か絡んでそうだな、絡んでたらいいな。あなたらしく私らしくはこの歌い方がとてもすとんと腑に落ちた。しばのりショック以前と以後だ、ひかりがこの歌を歌う意味があるんだ。Twilight Zone、とても強い曲。かえちゃんのこのとても大人びた歌い方にも物語が秘められていると信じてる。無方向アドベンチュアは特に意味なんかなくていい、軽やかなミユであってほしい。Voice of Heartもまたつかさがこれから紡ぐだろうストーリーを予感させる曲だった。時代に先駆けた北陸アイドルがいたんだぞって言おうな。
 そして坂道の途中。8月まではこれがアイドルコネクト最後の曲だった。やっちゃん今日も走ってるんだろうな。

 道程は平坦じゃないだろう。客観的に見れば鳴かず飛ばずで終わったコンテンツに過ぎない。だいたいお前はただぼけっと待っているだけのいち消費者に過ぎないじゃないか、と言われれば、そうなんだよねぇ、と答えるより仕方がない。
 それでもあの場所、あの時間は、アイコネにこれからがあると確信させてくれるのに十分だった。

---

 結局のところ、あの時間はなんだったんだろう、というと、Star*Trineのリリイベだった。
 そして文字通りStar*Trineに還っていった。アイドルコネクトの全体曲に再び新しい生命を与え返すための時間だった。

『届けて!!』

終わりの場所気づいても
星をたどり(星座結び)
つなげていくの*キミ*まで!
あの月のように 夜をともし続ける
「笑顔をあげたい」

 鍵括弧や記号を多用した葉巡先生の独特の歌詞。この日のためにあったとしか思えない。リリース前に生み出されたはずなのに。こんな曲が他にあるのか。

 さて、つけようと思っていたタイトルは一緒に行ったオタクに先を越されてしまったんですよね。

『アイドルコネクト』の『Star*Trine』 —セピアがカラフルに変わる夜— – すいすいすいみん 明日が今日?

 仕方ない、いくらなんでも出来過ぎだった。本当にセピアがカラフルに変わってしまった。さて、どうする。

 Star*TrineはTrine(三つ組)の名にならって三部に分かれた構成になっている。
 「セピアをカラフルに変えて」の次の展開はこう。

笑顔あふれる間に夢見る
『弱気』にgood bye! 『はばたけ』sing!
カラフルを虹へと変えて

 虹か。適当にこじつけちゃるか。なんかあったかな、ああ、これでいい。

 9色じゃん。だけど大した問題じゃないだろう。こんな奇跡を起こせるアイコネに常識なんかどうでもいい。

 この9人のイメージカラーがとても好きだ。9人揃った時の鮮やかさなんか史上最高だと思う。いつか、きっと。

カテゴリー: 未分類 パーマリンク

[ライブ]いつか虹になる日のために:「Star*Trine」リリースイベントとこれからのアイドルコネクトへ寄せて への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 2017年に触ったアイドルソシャゲとその周辺(1)アイドル事変、カミオシ、ナナシス、アイコネ | 092746

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中